毎年流行するかぜなどの呼吸器感染症。
その原因となるウイルスは実に数百種にも及ぶといわれています。
中でも乳幼児が最も感染しやすいのがRSウィルス。
あまり聞き覚えがないRSウィルスですが、実ははとても身近に乳幼児の健康をおびやかす存在です。
今回はRSウィルスについてご紹介していきます。
目次
1 RSウィルスってなに?

RSウィルスというのは略称で、正式名称は「Respiratory Syncytial(呼吸器の合胞体)」と言います。
特徴として、一生のうちに何度も感染を繰り返すウィルスであるというのが非常に厄介…。
このウィルスに感染すると呼吸器の細胞が合わさって1つになるためにそう名づけられました。
少し長い名前ですが「パラミクソウイルス科ニューモウィルス属」のもので、麻疹ウィルスなどと同じ種類でメタニューモウィルスに似ています。
ノドや気管支などの呼吸器に感染するものと認識しておきましょう!
2 RSウィルスの症状の特徴
RSウィルスの症状の特徴には、
- 感染経路…飛沫感染、手指を介した接触感染。最初に鼻に感染することが多い
- 潜伏期間…感染してから発症するまでの潜伏期間は2~8日
- 感染期間…ウイルス排泄期間は7~21日と長く、感染が広がりやすい
主にこのような傾向があります。
汚染されたカウンターでは6時間、手についたウイルスは約30分感染する力を持っているためかなり感染力が強いウイルスと言えます。
2-1 治るまでどれぐらいかかるの?
大人がRSウイルスに感染しても軽い鼻かぜ程度でおさまることがほとんどですが、赤ちゃんが感染すると通常は38~39度の発熱や鼻水、せきなど普通のかぜの症状を発症し、完治するまでに8~15日くらいでを要します。
その感染力はほとんどの子どもが2歳までに一度は感染するといわれているほどで、症状が悪化すると細気管支炎や肺炎を引き起こすこともあります。
はじめてRSウイルスに感染した乳幼児の25~40%に細気管支炎や肺炎の兆候が見られ、0.5~2%の乳幼児が呼吸困難などにより入院しているほどです。
さらに重症化してしまうと、
- 喘鳴
- 呼吸が速くなる
- 呼吸困難
- 無呼吸状態
などの症状があらわれたり、入院による治療が必要になるケースも。
こういった症状を事前に防ぐためにも早めに医療機関に相談することをおすすめします。
3 RSウイルス感染症の症状の現れ方

感染後の潜伏期ののち、
- 発熱
- 鼻水
- 咳
の症状が主に現れます。
3割程度の人はこのあと炎症が下気道まで波及して気管支炎や細気管支炎を発症し、咳の増強や呼気性の喘鳴、多呼吸などが現れてきます。
発症した中でも1〜3%が重症化するケースも。
特に心肺に基礎疾患がある小児は重症化しやすい傾向がありますが、通常は数日〜1週間で回復します。
3-1 新生児が感染したら
新生児も感染して発症し、無呼吸を起こすことがあるので注意が必要です。
また、細気管支炎にかかったあとは長期にわたって喘鳴を繰り返しやすいといわれています。
冬季に乳児が鼻汁、咳に引き続いて「ぜいぜい」してきたような場合には、その30〜40%がRSウイルス感染症によると考えられます。
鼻汁材料を用いたRSウイルスの抗原検出キットが使用可能ですが、保険適用は入院児のみになります。
4 RSウイルス感染症の治療法

出典:https://www.google.co.jp
RSウイルスに感染した場合、残念ながら特効薬はありませんが、主体になるのは対症療法(病気そのものを治す治療法ではなく、病気によって起きている症状を、和らげる治療法)です。
4-1 RS感染症の主な対策
RS感染症に効果的な対策としては、
- 水分補給…脱水気味になると、喀痰(かくたん)が粘って吐き出すのが困難になるので、水分の補給を心がけましょう。1度にたくさん飲ませるよりも、少しずつ数回にわけて飲ませてあげると効果的です。
- 部屋の加湿…加湿器があると便利です。空気が乾燥していると、咳が出やすくなるだけでなく、鼻づまりも起こしやすくなります。
- 鼻水のケア…鼻水が出て苦しそうな時は無理のない程度で、鼻吸い器で吸ってあげましょう。また、鼻に蒸気をあてると鼻通りが良くなるので、蒸しタオルをあてるのも効果的です。
主にこれらが挙げられます。
発熱に対しては冷却とともに「アセトアミノフェン(カロナール)」などの解熱薬を用います。
喘鳴を伴う呼吸器症状に対しては「鎮咳去痰(ちんがいきょたん)」薬や気管支拡張薬などを用います。
5 RSウイルス感染症の予防方法

RSウイルス感染症は、保育所などで施設内流行を生じやすい傾向があります。
また、家族内感染も高い確率で起きます。
特に冬、兄弟姉妹が風邪を引いている時には小さな子供は要注意です。
そして風邪をひいた人との接触はなるべく避けるようにします。特に1歳以下の乳児にいかに感染させないようにするかが重要なポイントです。
5-1 場所や行動にも注意!
特にRSウイルス流行期(10月頃から2月頃)には、次のような場所や行動を避けましょう。
- 受動喫煙の環境
- 人の出入りが多い場所
- 保育所
- 乳幼児と兄姉(学童、幼稚園児)との接触
特にタバコの煙は子どもの気道を刺激するため、咳症状が悪化し喘鳴を起こしてしまいます。
また、感染後の症状悪化だけでなく、健康時にも気道の状態を悪くしてしまうため、感染するリスクも高くなるとも考えられます。
5-2 家庭でもしっかり意識して
感染しやすい乳幼児の寝室は他の風邪を引いている家族と別にした方が無難です。
小さい頃にRSウイルスに感染すると、喘息になりやすいという傾向があります。喘息を防ぐためにもRSウイルス感染に対する予防を第一に考えましょう。
飛沫や接触により感染するので患者さんの気道分泌物の付着した物の扱いに注意し、手洗いとうがいに注力してください。
まとめ
RSウィルスは、
- 感染経路…飛沫感染、手指を介した接触感染。最初に鼻に感染することが多い
- 潜伏期間…感染してから発症するまでの潜伏期間は2~8日
- 感染期間…ウイルス排泄期間は7~21日と長く、感染が広がりやすい
上記のような傾向があります。
10月頃から2月頃の流行期には、
- 受動喫煙の環境は避ける
- 人の出入りが多い場所は避ける
- 保育所の環境に注意
- 乳幼児と兄姉(学童、幼稚園児)との接触時には注意
上記の環境を意識しましょう。
感染が確認された場合は、
- 水分補給
- 部屋の加湿
- 鼻水のケア
を行いましょう。
発症が確認された場合には、対症療法を主に考え、すぐに医療機関に相談してくださいね。
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