耳鳴り・難聴は、東洋医学では耳鳴(じめい)・耳聾(じろう)と呼ばれています。
この耳鳴り・難聴ですが、両方同時に出現することも多く、難聴は耳鳴りから発展することもあります。
古来より、耳鳴りは難聴の兆しと言われており、症状に違いはあれども東洋医学では発症のメカニズムは基本的に同じであると考えられています。
では、どんなメカニズムで耳鳴り・難聴が起こるのか?
よくある4つのパターンを、東洋医学の観点から解説していきます。
画像出典:http://beautyanswers.jp/kenkou/miminari/

坂井祐太
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師。都内鍼灸院での勤務の後、2014年に江戸川鍼灸院を開院。
「最小限の刺激で最大限の効果を」を理念に、一度の施術で使用するツボは1~3箇所とごく少数なのが特徴。
院内診療の他、在宅診療にも積極的に行っており、望まれる全ての方に東洋医学を届けられるよう、日々臨床に取り組んでいる。
1 ストレスが原因の耳鳴り・難聴
ストレスがかかると身体は緊張しがちになり、硬くなってしまうので、気の巡りが停滞しやすくなります。
気というのは正常に循環していれば身体を温め活発にしてくれるものですが、ひとたび停滞してしまうと温めすぎてオーバーヒートを起こしてしまうことがあります。
人間怒ると顔が赤くなりますよね?あれをイメージしていただければわかりやすいかと思います。
このオーバーヒートを起こして逃げ場がなくなった熱が、経絡という気の通り道をたどって耳周辺に溜まり、耳に正常な気血が巡るのを邪魔することによって耳鳴り・難聴が起こります。
突発性難聴なんかは、臨床上このパターンが多く見受けられます。
治療としては、身体の過緊張を調整しつつ熱をさますことが第1となってきます。
2 感染症などによる耳鳴り・難聴
感染症によって急激に熱が高まると、「ストレスが原因の耳鳴り・難聴」の時と同じようなメカニズムで耳鳴り・難聴が起こります。
3 体内の余分な水と熱が悪さした耳鳴り・難聴
普段から飲食の不摂生があったり、消化吸収能力が弱っていたりすると、身体の中に湿痰(しったん)と呼ばれる余分なお水が停滞しやすくなります。
これに加えて、「ストレスが原因の耳鳴り・難聴」のようにストレスを抱えていたり、身体を温めるものを好んで食べていたりして余分な熱を溜め込んでいると、熱とお水とが一緒になって経絡をふさいでしまい、耳に気血が巡らなくなってしまうことがあります。
治療としては、熱を冷ましながら余分なお水を処理していくことになります。
実は、この熱とお水が一緒になって悪さするパターンは結構やっかいになりがちです。
なぜかと言うと、この熱と水とが一緒にあると湿熱(しつねつ)というものに変化し、お互いに冷やして温めてのような感じで仲良くバランスをとりながら停滞してしまうため、身体から排出しにくくなってしまうんです。
人体というのは、体内のバランスが崩れるとそれを修正する能力が働くようにできています。
熱が多いと汗になって出したり、水が多いと小便や大便で排出したりします。
しかし、湿熱というのは悪いやつながらもワル同士で仲良くバランスをとっているので、身体がバランスの崩れだと認識しづらくなり、排出しにくくなってしまうのです。
大便の臭いがキツくてベチャッとしている、小便の色が濃くて泡立ちやすい、痰や鼻水が黄色くて粘っこいなどの症状がある方は、湿熱が溜まっている可能性が高いです。
そして湿熱は、肥疳厚味(ひかんこうみ)と呼ばれる油っこいもの、甘いもの、味の濃いものを日常的に摂取していると溜まりやすいので、自分は湿熱が溜まってるのかな~と思われた方は、食生活を見直してみてくださいね。
4 体力の弱りから起こる耳鳴り・難聴
最後に体力の弱りから起こる耳鳴り・難聴。
これはご高齢の方や大病を患った後に起こりやすいです。
耳に栄養を運ぶための気血が不足していることによって起こります。
治療では、気血の生産を促すことが第1となります。
身体そのものを活発するためにも、軽い運動やバランスの取れた食事が重要となります。
まとめ
以上、臨床上よく見られる4つのパターンをご紹介いたしました。
東洋医学では、発症のメカニズムが似ていることから「耳鳴りは難聴の入り口」と言われています。
時々耳鳴りがある、という程度であれば神経質になる必要はありませんが、だんだんと強くなるようでしたら早めに対処しておいた方がよろしいかと思います。
難聴になってからの治療は、東洋医学でも時間がかかることが多いです。
症状が軽いうちに対処して将来の大病を予防しましょう!
コメントを残す