以前在宅介護における食事についてこちらでご紹介しました。
前回は食事をする意味や介助の手順などをご紹介したので、今回は食事の後に必要なケアについて紐解いていきたいと思います。
食後のお口のケアのことを「口腔(こうくう)ケア」といいます。
口腔ケアとは何なのか?
仕組みやはたらき、定義についてご紹介していきたいと思います。
在宅介護における食事についての内容も合わせてご覧ください。
画像出典:http://www.stettlervolunteer.com/haburashi.html
目次
1 口腔とは?
そもそも口腔って何なのか?と思う方もいるかもしれません。
確かにあまり聞き馴染みのない言葉ですよね。
ここでは口腔とはどんなものなのかをお伝えしていきます。
1–1 仕組みとはたらき
口腔とは、歯や下などで構成された外部に開いた空間のことをいいます。
主なはたらきとしては、「咀嚼(噛むこと」「嚥下(飲み込むこと)「発音」の3つがあげられます。
それでは、このはたらきを担う主な口腔内の部位の仕組みについても触れていきましょう。
食事に使われる部位に当たるのが「歯」「舌」「唾液腺」があります。
それぞれご紹介していきます。
1−2 歯
口腔において、歯とはどのようなものなのでしょうか?
歯は食べ物を噛むことの他にも、発音をする際の空気の調整の役割を担っているのです。
歯は上顎と下顎を合わせて計28本が左右対称に生えています。
食べ物を噛み切るはたらきを持つ切歯と犬歯、食べ物をすりつぶして唾液と混ぜ合わせる母たらきを持つ臼歯で構成されています。
食べ物を噛むことによって当然汚れも発生しますよね。
歯の食べかすを放置してしまうと細菌の付着した「歯垢」といわれる黄白色の汚れが溜まってしまいます。
歯垢は歯磨きをすれば簡単に取り除けますが、歯垢がついたままだと石灰化してしまいます。
これを「歯石」といいます。
これらに含まれる細菌は虫歯などの原因になってしまいます。
また、歯垢や歯石の細菌によって歯に炎症が起こってしまうことがあります。
これを「歯周病」といいます。
歯周病になってしまうと歯が抜けやすくなってしまい、歯を失う原因になります。
悪化してしまうと手術が必要になることもあります。
更に初期症状では痛みを感じないという非常に厄介なものですので、予防はもちろんですが定期的な歯科医への通院も大切です。
1−3 舌
舌には食べ物を飲み込む機能の他に、味覚によって味を感知する役割も担っています。
また、舌にも歯と同様に発音にもはたらきかける部位でもあります。
舌の表面には「味蕾(みらい)」と呼ばれる食べ物の成分に反応して脳に刺激として伝える機能があります。
舌の機能が低下してしまうと細菌が感染し、口臭の原因になります。
口臭は自分では気づきにくく周りにも不快感を与えてしまいます。
大半は口腔内を清潔にすれば予防ができるのでこちらも気にかけてあげることが大切です。
1−4 唾液腺
主に3種類の大唾液腺と小唾液腺があり、1日に1リットルもの唾液を分泌しています。
唾液はほとんどは水分ですが、殺菌作用のある酵素や消化酵素などが少量ですが含まれています。
唾液には咀嚼や口腔内で食べ物をまとめて固める役割を担っています。
唾液が減ってしまうと舌が乾燥してしまい味の物質を分解しにくくなるので味覚が鈍ってしまいます。
2 口腔ケアとは?
2−1 定義
ここでは口腔ケアの定義とは何なのかをご紹介します。
口腔ケアとは、歯周病などの口腔の疾患を予防して、健康的な食事を楽しむためにとても大切なものなのです。
また、口腔は食べ物を食べることはもちろん、発音や呼吸によるコミュニケーションツールにもなります。
これらを健康的に行い、生活の質を向上するために口腔ケアが大切になってくるのです。
2−2 機能の維持
高齢者は歯周病や飲み込む力の低下などで口腔機能が低下しやすくなっています。
また、体が不自由になってしまったり、口腔ケアに関心を持たなかったりしてしまうことも機能の低下につながります。
このようなことからも口腔ケアとは介護と深く関わってくることがわかりますね。
不自由になるのは体の動きだけではないのです…。
健康的な介護生活を送るためにも口腔ケアにも注目しなくてはなりませんね!
2−3 感染防止
食べかすなどをしっかり除去しないとそこから発生した細菌による感染症を発症してしまいます。
また、「誤嚥(ごえん)」といわれる気管に誤って食べ物が入ってしまうことも高齢者には多く見られます。
誤嚥により、口腔内の細菌を唾液と一緒に飲み込んでしまって肺炎などにかかってしまうケースもあります。
食前や食後に口腔ケアをしっかり行うことで予防になりますのでこちらも注意しましょう!
4 口腔ケアの実践
それでは最後に、口腔ケアに必要な手順をご紹介します。
4−1 うがい
うがいを行うことで口腔内の菌を洗い流すことができます。
顔面麻痺などによる筋力低下で摂食障害で食べ物が口腔内に残りやすいこともありますので、うがいは定期的に行うことが大切です。
また高齢者がうがいができるかチェックするには以下のポイントに留意しましょう。
- 口の開閉が行える
- 頬を膨らませることができる
- 舌を出せる
- 顔を下に向けられる
これらをクリアできればうがいができますが、反対にクリアできなければ誤嚥などの危険性があります。
そういった場合は無理にうがいをせずに汚れを拭き取るなどのケアに変えていきましょう。
4−2 歯磨き
虫歯などの予防に効果的なのが歯磨きです。
主な注意点は以下のようになります。
- 歯ブラシを濡らして体調によっては歯磨き剤をつけて磨く
- ブラッシングは磨き残しのないように丁寧に
- 誤嚥がないようにブラッシングは適度な時間で
- すすぐ際はぬるま湯を使用する
介助が必要な場合はこれらを本人の体調や希望に沿って行います。
終わってからは乾いたタオルで口の周りを拭いてあげるのも忘れないでくださいね!
4−3 清拭
うがいや歯磨きの後に舌や粘膜などの歯以外の汚れを落とすことも大切です。
こちらは食事前の口腔ケアとしても有効です。
唇や頬の内側、舌や上顎を湿らせたガーゼやスポンジなどで拭き取ってあげましょう。
濡らしすぎてしまうとむせ返ってしまうので適度な水分量で!
4−4 義歯のケア
義歯を使用している方にはこちらのケアも大切です。
主な注意点は以下になります。
- 歯磨き剤は使わずに水洗いする
- 表面だけでなく裏側も洗浄する
- 部分入れ歯の場合は金属部分の汚れにも注意
- 使用しない時には専用の容器を決めて水に入れて保管する
義歯を使用している方の場合は気を配ることが増えますがこちらも口腔内の環境に影響するものなのでケアは怠らないようにしましょう!
4−5 口腔のトレーニング
洗浄だけでなく、機能の維持のためのケアも大切です。
唇や舌などの筋力を高めることで口腔機能は維持されます。
また、食前に行うことで唾液の分泌量も増えるので誤嚥の心配も減少します。
主な手順をご紹介します。
- 深呼吸をする
- 首や肩の運動をする
- 口の開閉や唇を尖らせる運動をする
- 舌を前後左右に動かす
- 頬を膨らませてすぼめる
- 発音の練習をする
- 唾液腺をマッサージする
これらを行うことを「口腔リハビリテーション」ともいいます。
口腔リハビリテーションをすることで食事を美味しく楽しいものにできるので是非試してみてくださいね!
まとめ
今回は在宅介護における食事の中から口腔ケアにスポットを当てていきました。
前回の内容と合わせて参考にしてもらえれば食事の介助はバッチリですよ!
今回お伝えしたことが食事の介助に少しでも役立てれば幸いです。
楽しく有意義な食事の時間を過ごしてもらうためにもおさえておいて欲しいですね!
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