アルツハイマー型よりも難しいレビー小体型認知症の介護。
周囲の人の対応、認識により症状や経過が大きく変わります。
日頃からそれぞれの症状に合わせた対応がとても大切です。
今回はレビー小体型認知症に関しての基本的な知識から、症状別の考え方など、幅広くご紹介していきます。
画像出典:luminaseniorcare.com
目次
- 1 レビー小体型認知症とは?
- 1-2 レビー小体型認知症の症状と特徴
- 2 診断が難しいレビー小体型認知症
- 2-1 レビー小体型認知症の診断に必要な情報、検査
- 2-2 レビー小体型認知症で見られる脳の特徴
- 3 レビー小体型認知症とパーキンソン病、アルツハイマー型認知症
- 4 2種類のレビー小体型認知症
- 4-1 「通常型」
- 4-2 「純粋型」
- 5 レビー小体型認知症の中核症状、周辺症状の考え方
- 6 レビー小体型認知症に多いレム睡眠行動障害
- 6-1 レム睡眠行動障害が見られた場合は?
- 6-2 朝方のレム睡眠時にレム睡眠行動障害が起きた時は自然に目を覚まさせてあげるように誘導するのもあり
- 6-3 睡眠の質を整えてレム睡眠行動障害を起こす頻度を減らす
- 6-4 日中のストレスを減らし、規則正しい生活を
- 6-5 寝る時間を決める
- 6-7 部屋の明るさにも着目して
- 6-8 睡眠薬の服用は慎重に
- 9 パーキンソン症状
- 9-1 パーキンソン症状とは
- 9-2 とにかく転倒に気をつける
- 9-3 パーキンソン体操で身体の硬化を防ぐ
- 10 レビー小体型認知症による認知の変動
- 10-1 認知症の変動が起こると
- 10-2 認知能力を維持するには
- 11 幻視と妄想
- 11-1 幻視は夕方から夜にかけて増加する
- 11-2 幻視や見間違いを減らすには環境を整えることから
- 11-3 幻視が現れた時は
- 12 レビー小体型認知症における自律神経症状
- 12-1 自律神経症状とは
- 12-2 中でも気をつけたい起立性低血圧
- 12-3 起立性低血圧が起こった時は
- 12-4 自律神経症では体温調節が困難になることも
- 13 レビー小体型認知症における抑うつ症状
- 13-1 抑うつ症状とは?
- 13-2 抑うつ症状への対応
- まとめ
1 レビー小体型認知症とは?
レビー小体型認知症とは三大認知症の一つです。
1912年にドイツの病理学者フレデリック・レビーにより「レビー小体」が発見され、1976年に日本の研究報告によって「レビー小体型認知症」が国際的に知られるようになりました。
英語ではDementia With lewy Boodies(ディメンシア ウィズ レビー ボディーズ)、略してDLBと呼ばれています。
レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症と共に、三大認知症と呼ばれ、アルツハイマー型認知症についでは発症者が多いとされています。
日本では50万人以上の発症者がいると推計されています。
65歳以上の高齢者に多く見られますが、40〜50歳代にも少なくありません。
また、アルツハイマー型認知症と比較して、男性に多い傾向があります。
1-2 レビー小体型認知症の症状と特徴
αシヌクレインというタンパク質が中心となるレビー小体。
このレビー小体という特殊な円形物質(神経細胞の中にある封入体と呼ばれるもの)が中枢神経を中心に多数見られます。
このレビー小体が大脳皮質に広範囲に出現すると、結果としてレビー小体型認知症が発症します。
レビー小体型認知症は認知症の一種ですので、記憶障害や理解力、判断力の低下を誘発します。
ただし初期から中期にかけては記憶障害はあまり目立たず、幻視や認知の変動、パーキンソン病、レム睡眠行動障害、抑うつ症状、自律神経失調症など特徴的な症状が様々に現れます。
また、レビー小体型認知症は薬に対する過敏性が高い(副作用が出やすい)ことも特徴の一つです。
2 診断が難しいレビー小体型認知症
下記の中で5つ以上該当する項目があれば、レビー小体型認知症の可能性があります。
- 物忘れがある
- 実際にはないものが見える
- 妄想が見られる
- 鬱的である
- 筋肉がこわばる
- 動作が緩慢になった
- 小股で歩く
- 睡眠時に異常な言動をとる
- 頭がはっきりしている時と、そうでない時の差が激しい
- 転倒や失神を繰り返す
上記の中で5つ以上が該当するようであればレビー小体型認知症の可能性があります。
もちろん最終的にレビー小体型認知症と診断されるためには専門の医師による問診のほか、各種の検査が必要になってきます。
様々な症状が現れるレビー小体型認知症は診断基準がまだ十分ではありません。
そのために診断が難しいとされています。
それに加えて、前述のように初期には記憶障害があまり目立たないので、医師が認知症をためらうということも考えられます。
CTやMRI(磁気共鳴画像診断)を通して脳の写真を見てみると、典型的なレビー小体型認知症では脳の萎縮が目立ちません。したがって年齢相応の脳と判断されたり、心の病として判断されてしまうことがあります。
2-1 レビー小体型認知症の診断に必要な情報、検査
下記の表を参考にしてください。
問診 | これまでにかかった病気 |
症状(いつ、どこで、どんな) | |
服用している薬 | |
困りごと(本人、家族) | |
認知機能検査 | 認知機能(長谷川式認知症スケール、MMSEなど) |
画像検査 | 脳の形状(CT・MRI) |
脳の血流(SPECT・PET) | |
心臓(MIBG心筋シンチグラフィー |
2-2 レビー小体型認知症で見られる脳の特徴
後頭葉に血流の低下が見られます。
これらはSPECT(スペクト)やPET(ペット)などの核医学検査によって確認できます。
ただし、その画像所見が見られるのは5人に3人程度と言われています。
また、レビー小体型認知症は脳の病気であるにも関わらず、心臓に変化が見られることも特徴です。
MIBG心筋シンチグラフィーという検査を行うと心臓でのMIBG(メンタヨードベンジルグアニジン)の取り込みが悪いことがわかっています。
交感神経にも障害があるため、交感神経系の造影剤であるMIBGを使っても心臓が造営されません。
3 レビー小体型認知症とパーキンソン病、アルツハイマー型認知症
レビー小体型認知症は大脳皮質を中心に中枢神経系から交感神経系に至るまで幅広くレビー小体がたまっていく病気ですが、パーキンソン病ではレビー子体が脳幹を中心に現れます。
レビー小体が大脳皮質に広く現れるとレビー小体型認知症に、レビー小体が主に脳幹に現れるとパーキンソン病になると言えます。
いずれにしても症状に必ずレビー小体が存在することから、レビー小体型認知症とパーキンソン病は本質的には同じ病気だと考えられている場合もあります。
また、パーキンソン病に認知症が加わる割合はかつて30パーセントくらいとされていましたが、現在は70〜80パーセントと考えられています。
理由としては、高齢で発病する例が増加してきていると共に、パーキンソン病の治療が進み、長いくする人が増えてきているためです。
そして、レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症は、いわば「親戚関係」にあると考えられています。
異なる2つの病気がぐうざんに重なるというよりも、一緒に起こりやすいと言えます。
レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の主な違いに関しては下記の表をご覧ください。
レビー小体型認知症 | アルツハイマー型認知症 | |
困りごと、生活障害 | 主に幻覚症状に基づく | 主に記憶障害に基づく |
幻視 | 多い | 少ない |
妄想 | 幻視に基づく妄想 | 元盗られ妄想など |
徘徊 | 少ない | 多い |
認知の変動 | あり | なし |
睡眠障害 | レム睡眠行動障害に伴う睡眠障害 | 単純な睡眠障害 |
パーキンソン症状 | 多い | まれ |
4 2種類のレビー小体型認知症
レビー小体型認知症は発症年齢や初発症状などの違いから「通常型」と「純粋型」の2つに大別できます。
4-1 「通常型」
高齢者に特に多く、発症年齢の平均は70歳ほど。
もの忘れ(記憶障害)が初期症状として現れます。
約30パーセントの人は亡くなるまでパーキンソン症状が見られないという統計もあります。
4-2 「純粋型」
40歳ぐらいの若い人に多く、約80パーセントの人の初期症状がパーキンソン症状です。
また、「通常型」と「純粋型」の決定的な両者の違いは、脳の中にアルツハイマー型認知症の病変があるかどうかで決まります。
すなわち、アルツハイマー型認知症の病変があるのが「通常型」で、その病変が見られないのが「純粋型」です。
その違いが記憶障害の有無に関わってくると考えられています。
5 レビー小体型認知症の中核症状、周辺症状の考え方

出典:http://nijiiroseikatsu.web.co.jp/
認知症の症状はアルツハイマー型認知症を念頭に「中核症状」と「周辺症状」に分類されるのが一般的です。
記憶障害や見当識障害、判断力の低下など、認知症になると必ず現れる症状を中核症状と言います。
それに対し、道に迷う、怒りっぽくなる、抑うつ、妄想など、中核症状に伴って二時的に現れる症状を周辺症状(BPSD)と呼びます。
中核症状、周辺症状に関して、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ただしレビー小体型認知症の場合、幻想や抑うつ状態、レム睡眠行動障害などはそれらが症状の中核になるため、周辺症状というよりかはむしろ中核症状と言ってもいいかもしれません。
6 レビー小体型認知症に多いレム睡眠行動障害

出典:https://info.ninchisho.net
レビー小体型認知症では睡眠中にうなされたり、多くな声で寝言を呟いたり、怖がったり、奇声をあげたり、怒ったり、暴れたりと言った異常な行動を取ることがあります。
レム睡眠の最中に現れるため、これを「レム睡眠行動障害」と呼びます。
原因は認知の変動と、脳幹網様体が関与していると考えられます。
レビー小体型認知症の人にはmこのレム睡眠行動障害が最初に現れたというケースが少なくありません。
発症(もしくは診断)の10年や20年前からこのような状態が見られるようになったという場合もあります。
したがってレム睡眠行動障害は、やがてレビー小体型認知症を発症することを示唆していることもあると言えます。
なおレビー小体型認知症の中期以降では、このレム睡眠行動障害は見られなくなる人がほとんどです。
6-1 レム睡眠行動障害が見られた場合は?
最初のレム睡眠は、就寝してからノンレム睡眠を経て約90分後にやってきます。
この時に大きな寝言や規制などの異常行動が見られることがあるわけですが、だいたいは10分以内におさまると言われています。
なので暴れたりして危険なことがない限りはそっと見守っていればあまり問題にはなりません。
6-2 朝方のレム睡眠時にレム睡眠行動障害が起きた時は自然に目を覚まさせてあげるように誘導するのもあり
朝方のレム睡眠の時間は長いために10分以上待ってもレム睡眠行動障害が止まないことがあります。
したがって、この場合は起こすのも1つの方法です。
ただし、身体を揺さぶって急に起こしてはいけません。
なぜなら現実と悪夢が混同してしまい、混乱や興奮が高じてしまう場合があるからです。さらに稀に心筋梗塞などをきたしてしまう場合があります。
具体的な対策としては、部屋の電気をつけて明るくしたり、懐中電灯を顔に当てたりして自然に目を覚まさせるようにしましょう。
また、目覚まし時計やキッチンタイマーなどを用いて覚醒を促すのも手です。
こうした習慣的に染み込んだ音はダイレクトに脳内に響くため、「起きてください」や「朝ですよ」と言った声かけよりも有効に働く場合があります。
6-3 睡眠の質を整えてレム睡眠行動障害を起こす頻度を減らす
レビー小体型認知症には認知の極端な変動が見られることがあります。
日中にそれが著しい時は夜中にこのレム睡眠行動障害が現れる可能性が高いことを頭にいれておくのもポイントです。
そのため、事前にレム睡眠行動障害を防止するために、しっかりと睡眠時における対策を意識して起きましょう。
6-4 日中のストレスを減らし、規則正しい生活を
レム睡眠行動障害を起こす頻度を減らすためには、精神的に安定した穏やかな状態で日中を過ごせるようにしましょう。
日中に不安なことや嫌なことなどのストレスがかかると、悪夢を見やすくなってしまう傾向があります。
また、夜中にぐっすりと眠れるように、日中は身体を積極的に動かすことや、昼夜のリズムを規則正しく整えることも大切です。
また、風邪や発熱、脱水などの不調があると発生しやすくなるため、健康管理にも注意が必要になってきます。
6-5 寝る時間を決める
寝る時間を決め、体感して習慣づけることも大切です。
なぜならば、起きる時間や睡眠時間が決まってくるためです。
寝る時間が定まらない場合は、起きる時間を守りましょう。
そうすることで、介護者がレム睡眠の時間帯を予見でき、レム睡眠行動障害の対する心構えと余裕が生まれることになります。
6-7 部屋の明るさにも着目して
部屋の明るさは入眠時は15〜30ルクス(日中の今の10分の1程度)に、就寝後は1〜2ルクス(フットライトの明かり程度)に調整するのも効果的です。
6-8 睡眠薬の服用は慎重に
レム睡眠行動障害には、一般的にはクロナゼバムなどの薬が用いられます。
また「てんかん」に用いられるリボリトールという薬が処方されることもあります。
ただし効き目に関しては個人差があります。
一般的には睡眠剤は眠りの訪れを早くすることはできますが、レム睡眠自体をなくすことはできないため、根本的な問題解決にはなりません。
そればかりか副作用などの悪影響が見られることもありますので、睡眠薬の服用は慎重にすべきです。
9 パーキンソン症状

出典:Livemint
レビー小体型認知症ではパーキンソン病特有の、動作緩慢、無表情、筋肉のこわばり、小股歩行などのパーキンソン症状が合わられることがあるという特徴もあります。
前述の「純粋型」では最初は認知障害が目立たないため、レビー小体型認知症ではなくパーキンソン病と診断されることも。
また、「普通型」ではmパーキンソン症状が目立たず、アルツハイマー型認知症や老人性精神病などと間違われるケースもあります。
9-1 パーキンソン症状とは
パーキンソン症状は、中脳にある黒質などが障害され、脳内の神経伝達物質であるドーパミンやアドレナリン、ノルアドレナリンが不足することによって起こります。
ドーパミンの量が正常の20%以下になるとパーキンソン症状が現れると言われています。
パーキンソン症状の主なものは動きが少なく遅くなる、表情が乏しくなる、筋肉、関節が硬くなる、すり足、小股歩行、すくみ足になる、転倒しやすくなるなどの症状が見られます。
また、レビー小体型認知症の場合、パーキンソン病の代表的な症状である新戦(手の震え)が割と少ない傾向にあります。
パーキンソン病に関して介護者が苦労を感じることの一つに動作が緩慢になることが挙げられます。
身体を動かそうにも本人の意思ではどうにもならないとともに、抵抗が強く時間がかかります。
そのため介護者はどうしても力任せになりがちで、その結果腰痛などの原因になります。
9-2 とにかく転倒に気をつける
生活の中でとにかく気をつけなくてはならないのは、転倒です。
レビー小体型認知症の方はアルツハイマー型認知症の方の約10倍転びやすいというデータがあります。
そのため、生活している家の中の環境を整えることも必要になってきます。
滑りやすいもの、床にあって引っかかるものなどは可能な限り取り除きましょう。
また、後ろから声をかけると振り向きざまに転倒してしまう可能性があるため、後ろから声をかけるのは避けましょう。
さらに服装に気をつけることも大切です。
ズボンの丈を短くする、外出時はサンダルを避け、両手を使えるようにリュックサックにするなどの配慮も必要です。
見過ごされがちですが、巻き爪などはきちんと手入れをして治すことによって転倒のリスクを減らすこともできます。
9-3 パーキンソン体操で身体の硬化を防ぐ
残念ながら今の医学ではパーキンソン症状を完全に治すことはできません。
そのため抗パーキンソン病薬を用いて症状を緩和させつつ、運動や体操、リハビリなどで筋肉の関節が硬くならないように心がけなくてはなりません。
現在ではパーキンソン体操というものが広く広がっています。
ポイントは広く、大きく動くことです。
少しずつでもいいので、毎日継続して行うことが大切になります。
また、マッサージや鍼も直接的にパーキンソン病を治すわけではありませんが、対症療法として筋肉の固縮を和らげたり、精神面え安心感がえられたりと行った効果があると言われています。
自宅でくれしている場合には医療保険による訪問マッサージや、訪問リハビリテーションを利用するのも1つの方法です。
10 レビー小体型認知症による認知の変動
認知症は「認知」に支障をきたすために認知症と呼ばれています。
ですが認知という概念は幅広く、様々な内容を含みます。
認知症の場合、「中核症状」がそれにあたります。
認知力低下の具体例として、例えば下記のような状態が挙げられます。
- 認知…思い出すことができない。覚えることができない。
- 言葉…言葉の意味がわからない。やりとりができない。
- 理解…理解ができない。
- 認識…それが何かわからない。
- 判断…判断することができない。
- 注意…複数のことに注意を向けられない。
- 計画…計画が立てられず、準備ができない。
- 手順…物事の手順がわからない。
- 使用…道具や物の使い方がわからない。
- 計算…計算ができない。
- 人物…相手が誰なのかがわからない。
- 時間…時間、日にち、曜日、季節などがわからない。
- 場所…ここがどこなのかわからない。
10-1 認知症の変動が起こると
レビー小体型認知症の場合、この認知能力が1日の中で、あるいは1週間、1ヶ月の間で激しく変動するのが特徴です。
原因は脳幹網様体の障害が関係しているとされ、頭がはっきりしている状態と、ぼーっとしている状態が入れ替わり起こります。
これを「認知の変動」と呼びます。
レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症と比べて、初期には認知障害はあまり目立ちません。
レビー小体型認知症は資格を司る後頭葉が障害されやすいため、視覚に関わる認知能力が低下することが多々あります。
見間違いや変形視などが生じて、相手や場所がわからなくなったりすることも。
10-2 認知能力を維持するには
介護者は認知能力が低下しているかどうかを常に把握しておく必要があります。
状態を把握していることで、認知レベルが高い時に伝えたいことを伝えることができます。
認知能力が低下してしまうと、そわそわしたり、テーブルをなんども叩くなど、身体的なサインが見られる場合があります。
さらに料理したり、テレビのリモコンを操作したりといった、物事を手順通りに段取りよく遂行することが難しくなります。(これを実行機能の低下と言います)
このような能力を維持するためには、折り紙などが効果的です。
新聞やチラシを1回折る程度のことでも、普段から続けることによって効果が見られる場合がります。
11 幻視と妄想

出典:Diary Of A Mad Mind
レビー小体型認知症の方に見られる特徴的な症状と言えば、視覚にまつわるもの。
例えば幻視や、見間違いです。
また、それに伴う妄想や作話などもしばしば起こってきます。
視覚機能に異変をきたす原因は。後頭葉(脳の後ろ側)の視覚野の血流が悪くなることが関係していると言われています。
ものが変形して見えたり、人の顔を区別できなくなったりするため、家族間でのトラブルの原因となる例も見られます。
また、幻想がありありと見える症状、「幻視は」レビー小体型認知症において極めて特徴的なものと言えます。
11-1 幻視は夕方から夜にかけて増加する
この幻視は日中だけではなく、夕方から夜にかけて増すということも認識しておく必要があります。
これは周囲が暗くなっていくという外的な要因の他、視覚を含む認知機能が低下するという内的な要因も関係していると言われています。
まずはしっかりと環境要因を見直すことも解決策として重要になってきます。
11-2 幻視や見間違いを減らすには環境を整えることから
幻視や見間違いは室内の環境が誘発しているケースが少なくありません。
そのため、部屋や廊下の照明具合、光と影の状態、見間違いやすいものがないかどうかなど、まずはそうした環境的要因がないかどうかを点検してみることが必要です。
その中でも特に照明は重要な要素で、チカチカする蛍光灯を白熱灯に変えるのも1つの方法です。
また、なるべく室内の照明を統一することも必要です。部屋ごとでそれぞれの明るさが異なっている環境はレビー小体型認知症の方にとっては好ましい環境とは言えません。
そして見間違いは暗い場所ではさらに多くなります。
壁に洋服をかけない、畳やカーペットのシミは取り除く、壁やカーテンの模様をシンプルなものに変えるなどといった対策も効果的です。
11-3 幻視が現れた時は
まずしっかりと認識しておきたいのは、「本人にとっては幻とは思えないほどリアリティをもって、ありありと見える」ということです。
本当はいないのに「子供が見える」と言われたら頭ごなしに否定するのではなく、相手の世界に合わせていくことが大切です。
もし「そんなものはない」など強く否定したり、感情的に対応すると、本人の混乱や興奮が康二たり、幻視をますます増長させたり、妄想へと発展することも考えられます。
さらに抑鬱状態を悪化させる原因にもなりかねません。
まずはしっかりと話を聞いてあげましょう。
興奮していたり、焦っていたり、怯えていたりした場合は尚更です。
怒ったり、はぐらかしたり、ごまかしたりすることは避けましょう。
介護者はどこで、どんな時に、どんな状況で、どんなものが見えたかなど、幻視のパターンを把握しておくといいでしょう。
脱水や風邪、便秘などの時に幻視がおきやすい等の傾向が分かれば、身体の不調を知らせるサインをいち早く見つけることができます。
12 レビー小体型認知症における自律神経症状
自律神経症(自律神経障害、自律神経失調症ともいう)もレビー小体型認知症の方によく見られる症状です。
レビー小体型認知症は脳の中だけにレビー小体が現れるわけではありません。
自律神経内(食堂や心臓など)にもレビー小体が見られ、それによって症状をきたしてしまいます。
12-1 自律神経症状とは
自律神経は活動する「交感神経」と、休む神経である「副交感神経」の2つで成り立っています。
交感神経は血管を収縮させ血圧や脈拍をあげる作用があります。
一方副交感神経は血管を拡張させ、血圧や脈拍を下げる作用を担っています。
通常この両方の神経はバランスを保ちながら機能しています。
自立神経症状とは、この2つの神経がうまく切り替わらず、身体に不調をきたす症状をさします。
症状は1つに限定されるものではなく、数え切れないほど多岐に渡りますが、主なものとしては、起立性低血圧、多汗、寝汗、便秘、下痢、倦怠感、頻尿、むくみ、肩こりや背中の痛み、ドライアイ、息苦しさ、頭痛、イライラ、耳鳴り、動機などなどが挙げられます。
レビー小体型認知症の方は様々なものを同時に多数併せ持つことも珍しくありません。
また、自立神経症状をきたす代表的な病気にはレビー小体型認知症の他にシャイ・ドレーガー症候群、メニエール病などがあります。
12-2 中でも気をつけたい起立性低血圧
レビー小体型認知症の方には血圧のバランスが悪かったり、頻脈であったり、動機が激しかったりする傾向があります。
これらは自律神経症状によるものと思って間違い無いでしょう。
それらの血圧異常の筆頭として挙げられるのが起立性低血圧です。
これは起き上がったり立ち上がったりした際に、急激な血圧低下をきたす症状です。
いわゆる立ちくらみもこれに該当します。
原因は立ち上げる際、血圧維持のために機能するはずの交感神経がうまく働かないことや、心臓から送り出される血液の量が少なくなるためです。
高齢者の場合、脚の筋肉が弱まっていて、心臓に戻る血流の働きが弱まっていることもその一因と考えらえれます。
また、降圧剤や血管拡張剤、利尿剤、抗パーキンソン病薬の服用も、起立性低血圧を引き起こすと考えられています。
12-3 起立性低血圧が起こった時は
起立性低血圧はしばしば転倒や失神を起こす危険があります。
とりわけ高齢者の場合は反射機能が低下しているため、注意が必要です。
起き上がる際は体の向きを変えながらゆっくりと時間をかけて動くことが大切です。
また、立ち上がった際はその場で脚の上げ下げや、足踏みを行うことも効果的です。
そして失神は食後に怒るケースもあります。
理由は消化に伴って血液が胃腸などに集まり、脳への血流が減るためです。そのため、食後は急に立ち上がらず、安静にすることが求められます。
排泄の際に力むことで血圧低下をもたらすこともあるため、注意が必要です。
失神が起きた場合には、速やかに救急車や医療職を呼ぶ必要がありますが、その際はJCSスケール(下記表参考)などの指標を元に意識の程度を伝えることが大切です。
【意識の程度「JCSスケール」早見表】
v.覚醒している | 1 | ほぼ意識清明だが、今ひとつはっきりしない。 |
2 | 見当識障害がある。 | |
3 | 自分の名前や生年月日が言えない。 | |
Ⅱ.刺激を与えると覚醒する | 10 | 普通の呼びかけで目を開ける。 |
20 | 大声で呼ぶ、体を揺すると目を開ける。 | |
30 | 痛み、刺激を与えながら叫ぶとかろうじて目を開ける。 | |
Ⅲ.刺激を与えても覚醒しない | 100 | 痛み、刺激に対し、払いのけるような動作をする。 |
200 | 痛み、刺激に対し、少し手を動かしたり、顔をしかめたりする。 | |
300 | 痛み、刺激に反応しない。 |
JSCとは、Japan Coma Scaleの略です。
覚醒の度合いは9段階あり、ローマ数字のⅠは1桁、Ⅱは2桁、Ⅲは3桁で表します。
数値は大きいほど意識障害が重いと考えてください。
12-4 自律神経症では体温調節が困難になることも
レビー小体型認知症ではしばしば体温の調節に障害が見られます。
具体的には多汗や寝汗などです。
手っ取り早く発汗を抑えるには、濡れたタオルを頚動脈が走っている首に巻くといった方法が効果的です。
一方低体温症になりやすい方は体温が下がることによって、免疫機能や代謝機能も低下してしまいます。
低体温症は手足の冷えとして現れることが多くありますが、上半身、または顔だけ汗をたくさんかいたり、手足だけ冷たいという人もいます。
手足などの局所的な冷感を訴える場合、入浴や足浴、手浴などを行います。
ややぬるめのお湯で入浴し、心身をリラックスさせることで、交感神経と副交感神経のバランスを整える効果が期待できます。
なお、こうした体温調整が難しいレビー小体型認知症の方には、室内の温度や湿度の調整も大切です。
温度は25度ぐらい、湿度は40〜60%に設定、被服内温度(服の中の温度)は31〜33度に保つようにします。
また、部屋と台所、今、トイレなどの各所において5度以上の温度差が内容にしましょう。
13 レビー小体型認知症における抑うつ症状
レビー小体型認知症の初期に現れやすいものに抑うつ症状があります。
レビー小体型認知症の場合、約7割の方がこの抑うつ状態を有しています。
アルツハイマーかた認知症などにおいても高い確率で見られますが、レビー小体型認知症はその2倍以上であると言われています。
13-1 抑うつ症状とは?
気分が塞ぎ込み、悲観的で、憂鬱な状態をさし、自己否定的な発言も見られる傾向にあります。
このような憂鬱な気分に支配されるとともに、意欲の低下や自発性の低下が現れます。
具体的には、やる気が出ない、興味関心が減る、食事を摂らなくなる、部屋に引きこもるなどです。
これまで述べてきたパーキンソン症状や、認知の変動、幻視からくる不安感などが抑うつ症状に影響を及ぼしているとも考えられます。
13-2 抑うつ症状への対応
抗うつ剤が用いられることが一般的ですが、レビー小体型認知症の場合、薬に対する過敏性などの問題があり、薬物治療はあまり効果的とは言えません。
本人の言うことを尊重、需要しつつ、負担にならない程度に意思決定を促していくことが大切です。
孤独な状態、環境にせず、安心感を与えることも必要です。
計算問題や、記憶を問うようなコミュニケーションは避けましょう。回答できないといっそう気分や自己評価が低下するためです。
日常生活の中では身体状況に応じて台所仕事や植木の水やりなど何らかの役割を持ってもらうのも効果的です。
休養が必要な時もありますが、太陽の光をあびる外出や趣味活動、レクリエーションなども効果的です。
まとめ
レビー小体型認知症に関しての基本的な知識から、症状別の考え方など、幅広くご紹介してきました。
アルツハイマー型よりも難しいレビー小体型認知症の介護では、日頃からそれぞれの症状に合わせた対応が極めて大切になります。
それぞれの症状をしっかりと見極めて、真摯に向き合って対応していきましょう。
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