高齢者の人口が年々増加していく高齢化社会の現代で、それぞれの症状に合わせた介護に対する需要も高まっています。
介護が必要になる症状の中で代表として挙げられるもののひとつに「認知症」があります。
これまでできていたことができなくなってしまう高齢者に関する症状の特徴を最も表しているのが認知症で、その中にも様々な種類があってどこから知っていけばいいかわからなくなりますよね…。
実際、認知症の種類ごとに原因や症状が異なってきますので全てに対して共通して行えるケアというのは難しいのかもしれません。
なので今回は認知症という大きなくくりにはなりますが、認知症のケアに大切なことをご紹介していきたいと思います!
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目次
1 認知症のケアとは?

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ではまず、認知症のケアについて簡単に触れていきましょう。
認知症と呼ばれるもの多数ある中で、代表的な症状に関するケアの心構えが挙げられています。
代表的な認知症の症状として挙げられるのが、
- 中核症状
- 周辺症状
主にこの2種類です。
認知症のケアと言われるものはいわゆるこれらの症状に対して私たちが高齢者にどう向き合っていくべきなのか?ということなのです。
身近な高齢者を守りたいと思っても専門的な治療は私たちにはできません。
しかし、高齢者を支えて前向きに過ごしていけるようにサポートすることができるのは私たちなのです。
専門知識を持った医師と高齢者に寄り添える私たち、このタッグで認知症のケアを行っていきましょう!
それでは、症状ごとに必要なケアについてご紹介していきます!
2 中核症状に関するケア

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中核症状とは、認知症患者が必ず発症する症状のことをいいます。
認知症の中核症状に挙げられるのが、
- 記憶障害
- 見当識障害
- 実行機能障害
- 失語
- 失行
- 失認
主にこれらが代表としてあります。
それぞれの症状の特徴とケアについて触れていきましょう!
2-1 記憶障害
名称の通り記憶に関する障害が出てくることをいいます。
昔のことや最近起こった出来事がすっぽりと記憶から抜け落ちてしまうので会話のつじつまも合わなくなってしまい、介護を行う側にとっても精神的ダメージの大きいものです。
初期の段階では頭に情報を入れる「記銘」という作業ができなくなり、出来事に関する「エピソード記憶」が失われていきます。
症状が進行していくと情報を把握したり思い出すことができなくなり、これまでできていた一般常識に関することや体で覚えていたことができなくなってしまうのです。
こういった記憶障害の際に私たちが行うケアとしては、
- 聞き取りやすいゆっくりなスピードで会話をしてあげる
- 会話の中の情報量をなるべく少なくする
- 繰り返し話すことで覚えやすくする
- 情報をメモなどで残して目で見れるようにしておく
などが効果的です。
「記憶を取り戻す」ではなく「記憶を失くさないように、覚えやすいように」という考え方が良いでしょう。
2-2 見当識障害
人物や場所、時間といった状況に関することを理解する能力に障害が出ることを見当識障害といいます。
人物に関することでいうと、例えば毎日会っていない人のことは覚えていられるけどたまにしか合わない人は家族でも忘れてしまうといったことが見られます。
時間や年齢などの変化するものが覚えられなくなったり、自分がいる場所がわからなくなってパニックを起こしてしまうこともあります。
見当識障害に対するケアで必要なことは、
- こまめにコンタクトをとって忘れないようにする
- カレンダーなどを有効利用して変動する数字が目に見えるようにしておく
- 食事や入浴の時間はなるべく正確に必要な時にだけ伝えるようにする
- 自宅内の環境が変わらないように物の配置に気を配る
- 外出時には必ず同行する
などといったことが重要です。
2-3 実行機能障害
日常生活の中で何気なく行っている、事象に関する過程(着替えなどの身だしなみや料理など)にある定義が行えなくなることを実行機能障害といいます。
ケアの方法としては、
- 行動をスタートさせる時に必ずやる決まりのようなものを作る
- 今何をしているか、次に何をやるかしっかり声がけして行っていく
- 「今」と「次」を分けて認識できるように声がけをする
- パニックにならないよう行動ひとつひとつを区切って行う
などといったことが挙げられます。
これまでできていたことができなくなるので、作業をスムーズにこなすというよりは、過程ひとつひとつに重きを置いてしっかり完結させてあげるという考え方が良いでしょう。
2-4 失語
物や人の名前が出なくなることを失語といいます。
認知症の進行によって、
- 運動失語→話を理解できても話せない
- 感覚失語→話せるけど相手の話が理解できない
- 錯誤→物の名前を間違えるようになる
これらの症状が見えてきます。
ケアの方法としては、
- 話すスピードやトーンを一定にする
- 早口になりすぎない
- 理解がしやすいようジェスチャーを交える
などが挙げられます。
会話をするのが難しくなってしまっている、ということを私たちがしっかり理解した上で話をしていくことが大切です。
2-5 失行
運動機能障害がないのに麻痺などの症状が現れることを失行といいます。
着衣に関するものや、日常生活で何気なく行っていたハサミで何かを切ったりするなどの組み合わせの動作ができなくなってしまいます。
パズルや模写といった形作る行為や手を振ったりするといったことも行えなくなってしまうので、精神的な負担も大きくなってしまうでしょう。
無理に道具を使って頑張らなくて良いことを伝え、何か作業をしている時にはなるべく声をかけないようにするのが失行に対するケアの方法です。
2-6 失認
視力に異常があるわけでもないのに物を認識できなくなってしまうことを失認といいます。
失認の状態にも種類があり、
- 半側空間無視→右側が見えるのに左側が見えないなど
- 相貌失認→人の顔を認識できなくなる
- パリント症候群→遠近感が掴めなくなる
- 地誌的見当識障害→今いる場所や道がわからなくなる
- 物体失認→物を認識できなくなる
といったことが見られてきます。
日常生活で感じている場所やものなどに関する不便を私たちがしっかり把握し、環境の変化にパニックにならないよう注意してあげることでケアができます。
3 周辺症状に関するケア

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中核症状とは異なり環境や心理状態によって発症するのを「周辺症状」といい、
- 妄想
- 幻覚
- 徘徊
- 弄便
などの症状が見られます。
それぞれについて触れていきましょう。
3-1 妄想
認知症の進行によって、自分がどこに何を置いたのかを忘れてしまうことがあります。
そういった時に「盗られた!」と思い込んでしまって被害妄想に陥り信頼感の構築されてないヘルパーや、ひどい時には家族にさえ疑いの目を向けてしまうのです。
このような妄想が出始めてきてしまった時には貴重品などの大切なものに目印をつけたり、置いておく場所を固定しておくと良いでしょう。
3-2 幻覚
見えていないものが見えている、あるはずのない痛みの感覚があるといった症状が見えてくることがあります。
実際に見えている!と言っているところに同行したり、痛みがあると訴えている箇所を優しく触りながら、
「そんなものはないからね。」
と声をかけて安心させてあげましょう。
頭ごなしに否定や拒否をしてしまうと却って恐怖を覚えてしまうので慎重に対応してあげると良いですね!
3-3 徘徊
見当識障害などで高齢者がふらっと出て行ってしまって戻ってこれなくなる、といったことも少なくありません。
最悪の場合徘徊している先で亡くなってしまうという自己のケースもありますので、徘徊に関するケアには常に神経を尖らせておく必要があります。
なぜその場所に行きたいのか尋ねたりして本人の気持ちを尊重しつつ、後日一緒に行きましょう、などと約束をしてあげると安心しますのでケアとしては良いでしょう。
約束を守ってあげることで今後の徘徊に対する予防にもなりますよ!
3-4 弄便
自分の大便を壁や物、体に擦り付けてしまう行為を弄便といいます。
トイレで排泄した時にはほとんどなく、主におむつに失禁してしまった時の不快感が原因で起こるものなので、排泄に関する予防やケアを行っていきましょう。
例えば自然に排泄ができるようおむつなしで移乗してトイレにいけるようサポートしてあげたり、おむつが必要な場合にはこまめに大便をしていないかチェックしてあげるのが弄便の予防には効果的です。
4 その他にどんなケアがあるのか?

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これまで各症状ごとに大切なケアの方法について紹介してきましたが、これらに関わることのみに限らず意識しておくと良いこともあります。
ここでは改めて認知症のケアに大切なことを挙げていきますので、先ほどまでのケアと合わせて実行してみてくださいね!
認知症のケア、という大きなカテゴリに共通して大切なのは
- 健康管理
- 見守りや観察
- 行動を共にする
- 声がけを頻繁に行う(失行の場合は除く)
- 自宅内や外出コースなどの生活環境を整える
- 高齢者の興味や関心を尊重する
- 高齢者の尊厳、ケアを行う家族への心遣い
などが重要になってきます。
高齢者のケアをしっかり行えるように家族でしっかりスクラムを組んでチームで行っていくのが大切です!
5 ユマニチュードとは?

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新たな認知症のケア方法として挙げられているのが「ユマニチュード」といわれるものです。
フランス発祥の「優しいケア」として話題の手法で、機械的な介護を防ぎ、感情的になりやすい認知症患者としっかり人として関わっていくといったコンセプトの元実践されています。
主に、
- 見つめる
- 触れる
- 話しかける
- 立つように支援する
これらの基本ステップを行うことで、ケアをされる側と行う側の信頼関係を構築しながらケアを行うという絆を重要視したものなのです。
6 認知症ケアの方法を動画でご紹介!

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それでは最後に、認知症のケアについて触れた動画をいくつか紹介していきますね!
先ほど触れたユマニチュードについてのものもありますので参考にしてください!
6-1 認知症ケアの基本視点〜心に寄り添うケアを中心に〜
動画出典:https://www.youtube.com/watch?v=P8MKL3Ymjpg
6-2 三好春樹先生論 認知症ケアの7原則
動画出典:https://www.youtube.com/watch?v=VpDiOn9LRV0
6-3 ゼロから始める認知症ケア生活
動画出典:https://www.youtube.com/watch?v=LRwLoqZiyZw
6-4 ユマニチュード/認知症ケア 優しさを伝える技術
動画出典:https://www.youtube.com/watch?v=C4j_BCKDzrQ
6-5 NHK認知症キャンペーン「ユマニチュードって何?」
動画出典:https://www.youtube.com/watch?v=NGxmoGy51f0
まとめ

画像出典:http://www.mag2.com/p/news/206016
今回は認知症患者へのケアについて触れてきましたがいかがでしたでしょうか?
専門医でないとできないことがある反面、私たちにしかできないことも当然あります。
家族を守るために行動したい!と思うことは皆様も一緒ですよね?
大切な家族のために自分たちができることを率先して行っていこう、という気持ちがまず初めに大切になってきますので、認知症に患者本人だけでなく共に向き合っていきましょう!
ちなみに、認知症が進行してくるとうつのような症状が出てくる場合もありますので、その際にはまず医師の診断を受けた上でケアの方法をとっていくと良いですね。
今回ご紹介した内容をきっかけに皆様が認知症ケアに対する意識を向けていただけると幸いです。
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