認知症を発症する高齢者が増えていく中で、身近な誰かを守るために私たちが知っておくべきことも増えていきます。
「認知症」と一言では言いますが、これまでご紹介してきたように認知症にも様々な種類があり、それぞれに症状や予防法などが異なってきます。
「どんな認知症になるかわからないし、今から動いてもね…。」
「いつか本当に発症したらその時に色々調べればいいか…。」
「そもそも認知症になんかならないかもしれないし…。」
確かに、知っておいたほうがいいとは思いつつも、実際には身近であって欲しくないと思いますよね?
自分たちの環境に認知症などの病気がないことのほうがいいのが当然ですが、起こりうる可能性が少しでもあれば用心に越したことはない、とも思いませんか?
様々な症状がある認知症への知識や対策などを今からある程度でも身につけておくことふができればいざ実際に目の当たりにした時に困らずに安心して高齢者が毎日を過ごせるようになるかもしれません。
さらに、もし事前の予防がしっかりできていれば発症自体しないままいられるかもしれませんよね!
何事も事前準備は大切、ということで今回も認知症についてご紹介します。
今回触れるのは、「脳血管性認知症」という症状です。
それでは、脳血管性認知症はどのような認知症なのか?これまでのように触れていきましょう!
画像出典:https://medicalnote.jp/contents/160906-002-RE
目次
1 脳血管性認知症とは?

画像出典:healthlife.xrea.jp
それではまずは、脳血管性認知症というのはどのような認知症なのか?という疑問から解消していきましょう!
そもそも脳血管性認知症という言葉自体に聞き馴染みがない、という方もいらっしゃるかもしれません。
ですが実は脳血管性認知症はアルツハイマー型認知症の次に多く見られる認知症であると言われています。
1-1 何が原因で発症するのか?
脳血管性認知症は、脳梗塞で脳の血管が詰まったり、脳出血で血管が傷ついてしまった時などが原因で起こるとされています。
また、くも膜下出血でも認知症を引き起こすとされています。
これらの病気を発症してしまうと脳細胞に酸素が送られなくなってしまいます。
それによって脳細胞が死んでしまい、脳血管性認知症を発症してしまうのです。
また、高血圧や糖尿病、喘息などを患っている方も脳血管性認知症になりやすいと言われています。
1-2 どのような症状か?
では、脳血管性認知症にはどのような症状が見られるのでしょうか?
脳血管性認知症の主な症状は、
- 体が麻痺してしまう
- 記憶力の低下
- 泣いたり怒ったりといった感情のコントロールが困難になる
- ぼーっとしやすくなってしまう
- 反対にはっきりと行動できる日があったりとまちまちになる
- 上下左右の感覚がわからなくなる
- 着替えや歯ブラシ、お箸の使い方などがわからなくなる
- 言いたいことがなかなか出てこない
などといった症状が見られ、また男性の発症率が多いと言われています。
意欲や行動といった「BPSD」という症状が主にあり、これらの他にも脳血管性認知症は前述の病気や他の認知症と関わってくる症状もあります。
次の節で脳血管性認知症と関わりがあるその他の症状について触れていきましょう。
2 他の病気との関わりと合併しやすい認知症

画像出典:http://zutsu-raku.com/alzheimer-syoujyou-2922.html
2-1 関わりのある病気
脳血管性認知症になると、原因とも言われている脳梗塞を再発してしまい、急激な悪化も見られる恐れがあります。
また、感情のコントロールがうまくできないことによって気が滅入ってしまい、うつのような症状になってしまう場合もあります。
これらの他にも高血圧糖尿病といった疾患を悪化させてしまうということもあります。
2-2 合併しやすい認知症
脳血管性認知症を発症してしまうと、他の病気を発症する可能性高くなるだけでなく、別の認知症を併せて発症する可能性も高くなってしまいます。
アルツハイマー型認知症と合併する可能性があり、似たような症状のが見られることから「混合型認知症」と称されることもあります。
また、症状が出たり出なかったりする「まだら認知症」といった通常の認知症とは少し違った症状を合併しやすいケースもあります。
3 高次脳機能障害との違い

画像出典:https://jico-pro.com/columns/16/
脳血管性認知症と同様に、脳の疾患に関わって発症するものとして「高次脳機能障害」というものがあります。
高次脳機能障害とは、記憶や感情、言葉といった情報を支配する機能が損傷してしまって起こるもので、症状としては失語や失行、記憶障害や機能障害があります。
脳血管性認知症と同じように脳に関わる症状ですが、大きな違いがあります。
それは、
「脳血管性認知症などの認知症が徐々に進行していくのに対して、高次脳機能障害は進行することはなく完治する場合もある」
というところです。
後ほど脳血管性認知症の治療についても触れますが、認知症は完治することは難しいとされています。
ですが高次脳機能障害は治療を進めることで症状が回復し、完治する可能性もあるというのが大きな違いです。
また、認知症はそのほかの疾患が原因となって発症するものですが、高次脳機能障害は脳の昨日の障害が直接関わってくるといった違いがあります。
脳血管性認知症なのか高次脳機能障害なのか?判断し、理解しやすくするためにも違いを知っておくと良いでしょう。
4 脳血管性認知症を予防するには?

画像出典:https://athome-kaigo.jp/vascular-dementia
それでは脳血管性認知症を予防するにはどういった方法があるのでしょうか?
ここでは主な予防法についてご紹介していきたいと思います。
脳血管性認知症を予防するには、まず脳梗塞や脳出血などの疾患にならないようにすることが何よりではないでしょうか。
脳梗塞や脳出血を発症する原因が生活習慣にあるとされていますから、生活習慣の見直しや予防に向けての行動が必要不可欠と言えるでしょう。
生活習慣で改善すべき点としては、
- 食生活の乱れを整える
- 過度の喫煙を控える
- 運動不足(週に3日以上は運動するのが良い)
- 睡眠不足(起床後の日光浴も効果的)
- 充実した生活が遅れるような趣味を持つ
- 家族以外の人となるべく会うようにする
- 過剰な飲酒をやめて適量の摂取にする(適量のアルコールは予防にもなるため)
主にこれらが挙げられます。
音楽鑑賞や読書、オセロや将棋といった娯楽を通じて行う脳の活性化を目的としたリハビリを行うことも大変効果があると言われています。
また、脳梗塞になってしまった場合などは認知症を発症しないように異変に敏感になると共に定期的な受診を欠かさず行うことで症状の悪化といった事態は防げる可能性が出てきます。
5 脳血管性認知症の進行について

画像出典:http://doctor-college.com/disease/detail/78
脳血管性認知症の進行は合併しやすいとされているアルツハイマー型認知症とは大きく異なり、アルツハイマー型認知症が緩やかな下り坂のように進行していくのに対して、脳血管性認知症は階段状にガタンガタンと進行していくのが特徴です。
また、脳血管性認知症の原因とされている脳梗塞も進行に大きく関わると言われています。
脳梗塞は一度発症してしまうとその後も小さく同じ症状が起こりやすくなってしまいます。
その小さな脳梗塞を繰り返すことによって脳血管性認知症を進行させてしまうという悪循環になってしまうのです。
このように、一度原因となる症状を発症することで進行すしてしまう可能性がグンと広がってしまいます。
ですので、こういった事態を防ぐためにも先ほども触れた生活習慣の改善やリハビリ、定期的な受診などは欠かさず受けましょう。
特に定期的な受診はほんの少し「おや?」と思う症状が見えるようであればすぐに受診しましょう。
心配があればすぐに病院に行って「なんともなかったね」で済めば安心できますし、もし何かあったとしても早期発見できれば症状の進行を防ぐことにも繋がります。
6 脳血管性認知症患者の治療法や家族にしてもらいたい対応

画像出典:https://ameblo.jp/bihadakenkou/entry-12265235868.html
6-1 主な治療法
脳血管性認知症を発症してしまった場合、完治させることはできないとされています。
脳の細胞は一度死んでしまうと戻らないと言われており、症状への完全なる対策が確立されている訳でもないので、やはり再発防止や進行を抑えたりといった予防に力を入れていくような治療法になってしまいます。
また、意欲や自発性といった部分に対処できる脳循環代謝改善剤やうつの対処となる抗うつ剤、高血圧や糖尿病に効果のある薬剤といった投薬も治療法として挙げられています。
アルツハイマー型認知症に使用する薬剤の投与も効果があるとされていますがそれぞれの症状によって個人差がありますので投薬前には担当してくれる医師との相談は必須ですね。
6-2 家族の対応
身近な高齢者が脳血管性認知症になってしまった場合、そのご家族や親しい知人などはどういった対応をしてあげるべきなのでしょうか?
脳血管性認知症患者に対して適した対応としては、
- なんでできないの?なんでわからないの?といった言葉で傷つけないようにする
- できる時とできない時があるということことを理解して手助けは欠かさない
- 介護保険でのサービスを利用して介護をする方も安心できる環境を整える
- どんな時に怒るか?どんな時に泣くのか?といったポイントを知る
- リハビリや娯楽は本人が無理なくできるように誘ってあげる
- また、誘い方や誘うタイミングなども考えてあげる
- 初期段階だと自分が認知症だとわかっていることがあるというのを理解する
- 症状が進行してしまった場合にどういった治療やサポートを希望するかを高齢者本人と話し合っておく
主にこれらが挙げられます。
脳血管性認知症に限ったことではありませんが、発症してしまってネガティブになってしまいデリケートな問題になることもあるでしょうから、あくまで発症した本人の意思を尊重した対応をつつ、症状の悪化を防ぐための対応を行なっていきましょう。
7 その他の血管性認知症

画像出典:http://www.panforteproductions.com/entry3.html
脳血管性認知症の他にも血管性とされている認知症がいくつかありますので、名称と特徴を挙げていきます。
7-1 多発梗塞性認知症
大脳皮質を含む広い範囲で比較的大きめな脳梗塞が複数発生することで起きる認知症です。
脳梗塞を発症するたびに急激な悪化を段階的に示していくのが特徴です。
7-2 小血管型変性認知症
皮質の下の白質に小さな梗塞が徐々に増えて認知症を発症するタイプで「皮質下血管性認知症」とも呼ばれます。
段階的な発症ではなく、発症時期自体もはっきりしないタイプで、白質の広い範囲で障害が広がる場合があります。
7-3 低潅流性認知症
脳の血液の循環が悪くなることで発症するタイプで、高度な血圧の低下や心肺停止、太い動脈の高度な狭窄で起こります。
また、これらの他にも家族に血管性認知症だった人がいた場合に起きる遺伝性のタイプもあります。
まとめ

画像出典:https://ansinkaigo.jp/knowledge/2357
いかがでしたでしょうか?
今回は認知症の中から脳血管性認知症について深掘りしてきました。
生活習慣の乱れやアルツハイマー型認知症との合併など、知っておかなければならない症状が多くありますが、反対にこれらを知っておくことで脳血管性認知症だけではなくそれに関わる多数の要因や症状に対して行動することがスムーズになります。
また、認知症=記憶障害といったことだけを念頭に置いてしまうとふいに言ってしまった言葉で患者さんを傷つけてしまうことがありますから、他の認知症やその他の症状と同様かもしくはそれ以上に患者さんとの接し方には神経を尖らせる必要があります。
とはいえやはりご自身だけでは負担も大きいですから、介護保険で利用できるサービスや医師の協力を得て介護者自身への負担も極力減らせるようにしましょう。
今回ご紹介した内容でが皆様にとっての脳血管性認知症が身近になった時の対策として活躍することができれば幸いです。
コメントを残す