寒さが厳しくなってきている今日この頃、冷えによって関節が痛むという方が増えていらっしゃいます。
一言に関節の痛みと言っても東洋医学的にはいくつか分類があり、大きく分けると、体内環境の崩れによって起こるものと、外的環境に影響されて起こるものがあります。
今回お話するのは、外的環境に影響されて起こる痛みの病症の一つ「痹証(ひしょう)」についてです。
画像出展:https://www.life-rhythm.net/hizi-uchigawa-kansetu/

坂井祐太
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師。都内鍼灸院での勤務の後、2014年に江戸川鍼灸院を開院。
「最小限の刺激で最大限の効果を」を理念に、一度の施術で使用するツボは1~3箇所とごく少数なのが特徴。
院内診療の他、在宅診療にも積極的に行っており、望まれる全ての方に東洋医学を届けられるよう、日々臨床に取り組んでいる。
1 痹証(ひしょう)って何?
痹証というのは、「体の弱っている部分につけ込んで冷えや湿気などが体に侵襲し、経絡という人体の気血の通り道を塞いでしまうことによって起こる病」です。
このうち、「体が弱っている」ということが重要で、これを東洋医学では「正気の虚(人体にとって有用な気が少ない状態のこと)」といいます。
この「正気の虚」というのは、精神的ストレス、肉体疲労、睡眠不足、飲食の不摂生、季節養生の間違いなど、色んなことで起こります。
例えば、肉体疲労が重なっているところに、クーラーなどの体を冷やしてしまうと気血が適切に巡りにくくなり、痛みが生じやすくなってしまいます。
正気の虚、または外界からの影響がなくなれば自然寛解していくものですが、正気の虚を自分自身の力で戻しきれなかったり、外界からの影響を排除するための自然治癒力がうまく働かなかったりすると、なかなか治癒しないという状況に陥ります。
2 痹証はどうしたら治るの?
まずは、飲食、睡眠、運動、これらを見直してみることです。
あたりまえのことのようですが、この3つを正すことは健康への王道です。
絶対に外せません。
「これだけやっていればいい」というような巷にあふれるお手軽健康法は、体質が合っていれば良くなることもありますが、万人に通用するものではありません。
例えば、一時期流行った「水1日2リットル」という健康法。
当院にも、それを信じて実践されていた方がいらっしゃっていました。
主訴は、「繰り返す関節の重だるい痛み」。
雨の日に特に悪化しやすいのが特徴でした。
よくよくお話を伺うと、どうも水をたくさん飲むとお腹が張って苦しいとのこと。
明らかに、処理能力を超えた飲み方ですね(苦笑)。
鍼灸治療を施すと共に、喉が欲する以上の水分の摂取をやめて頂いたところ、数回の治療で速やかに緩解。
その後も、健康維持で時々来られていますが、食事量・運動量が変わらないのに3ヶ月ほどで10キロ痩せたとのことでした。
余分なお水が溜まらなくなった結果ですね(もちろん全員がこの方法で痩せるわけではないですよ!!)。
もちろん関節の重だるい痛みは一切出ていません。
この方は、過剰な水分摂取によって体に余分な水分が溜まり、体の余分な水分が水の代謝機能低下を引き起し、そんな状態で多くの水分を摂取し・・・という悪循環に陥っていました。
しかも水溜まりを起こしている中で体外の湿気が多くなったため、体の内と外の「お水」が一緒になって体に悪さし、痛みを悪化させていました。
3 水1日2リットル健康法は間違っているの?
「どんな人にも効く」という部分が間違っているだけで、人によっては効果が期待できる側面もあるでしょう。
ちなみにこの健康法、日本に住んでいる限りはあまりオススメできません。
日本は湿度の高い国であるため、外からの湿気に害される機会が多いです。
そんな中で、体内にもお水をため込んでいたら・・・。
養生法も土地柄に合わせるということが重要なのです。
まとめ
病気になったら、まず養生法を見直してみましょう。
それでも良くならない、そんなとき鍼灸はきっと助けになると思います。
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