様々な病気の原因を究明するために、多くの研究は目覚ましい進歩を遂げていますが、現時点では病因が明らかになっていない病も数多く存在します。
それらの病気には性別や年齢によって発祥の傾向が異なるものもあり、明確な発症原因がわかっていないものもあるそうです。
今回紹介するのは、「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」という10万人に1~3人の割合で発症する、珍しい病気についてです。
主な症状や原因、対策やケアなどについて、ALS(筋萎縮性側索硬化症)に関する内容を紹介していきますのでぜひご覧下さい。
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目次
1 ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは?

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ALS(筋萎縮性側索硬化症)ってどんな病気? 「ALS」という病名を聞いて、どんな病気か思いあたる人は少ないでしょう。
そこでまず、ALS(筋萎縮性側索硬化症)がどんな病気かについて触れていきましょう。
1-1 特徴
「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」は、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉、体を動かすのに必要な筋肉が徐々にやせて力がなくなっていく病気です。
しかし、筋肉そのものの病気というわけではなく、思いどおりにからだを動かすときに必要な筋肉を支配する神経「運動ニューロン」のみが障害をうけます。
この運動ニューロンは、歩いたり、走ったり、食べ物を飲み込んだりするなどの動作をするときに、脳の命令を筋肉に伝える役目をしており、この運動ニューロンが侵されると、次第に力が弱くなり、筋肉がやせていきます。
1-2 主な症状
「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」は主に、
- 筋力低下
- 構音障害・嚥下障害
- 呼吸困難
- 認知症
などの症状があります。
筋力が低下すると、ペンを握ったり、飲み物の蓋を開けたり、腕をあげるのが難しくなり、構音障害・嚥下障害の症状が出ると、話したり、食べ物を飲み込んだりするのが困難になります。
また、そこまで多くないものの、「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の約20%の患者さんが認知症を合併し、意欲低下が起こったり、言葉数が少なくなったりするようです。
1-3 初期症状
念のため、「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の初期症状についても触れておきましょう。
- 手や指、足の筋肉が弱くなりやせ細る
- 手足の麻痺による運動障害
- コミュニケーション障害
- 球麻痺
などがあり、「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の主な症状と一致するものがありますが、最初は、箸が持ちにくい、重いものを持てない、手や足が上がらない、走りにくい、疲れやすいといった症状があらわれることが多いようです。
覚えがあるものがいくつかあれば、早めに検査を受けましょう!
2 主な原因は?

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ここでは、「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」を発症する原因についてお話ししていきます。
【グルタミン酸過剰説】
ALSは発症原因がはっきりしていないものの、いくつかの仮設の中で、主なものに「グルタミン酸過剰説」があります。
これは、神経細胞の外のグルタミン酸が過剰となってしまって運動ニューロンが死滅するという説です。
【環境説】
紀伊半島などでALSの患者さんが他の地域より多く発症したことから、何らかの環境が影響しているのではないかという説です。
しかし、この説は寿命や医療環境といった他の要因が関係している可能性があったため、まだ不確定です。
【神経栄養因子欠乏説】
神経を成長させたり、傷ついた細胞を回復させたりするのに必要な栄養成分が欠乏することによって、運動ニューロンが壊れて神経が成長せず、傷ついた細胞が回復しないという説もあります。
【家族性 / 遺伝性説】
ALSは約90~95%が遺伝と関係なく発生し、残りの約5~10%が家族性です。
家族性のALS患者さんの一部に、遺伝子の突然変異が発見され、これによって運動ニューロンが破壊されるのではという考えもあります。
3 発症しやすい年代は?

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「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」は、未だに究明されていないことが多く、難病中の難病とも言われています。
しかし、その中でも発症しやすい年代というものがあるようです。
ALS患者数は、年々増加傾向にあり、男性に多く認められるようです。
また、中年以降〜高齢者にかかりやすいという特徴があり、最もかかりやすい年齢層は60~70歳台と言われています。
しかし、もっと若い世代での発症もあり得るので、注意が必要です。
4 ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療とケアについて

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続いて、「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の治療法やケアについて紹介していきます。
「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の治療法には主に、
- リルゾール(内服)
- エダラボン(点滴)
などが挙げられます。
では、それぞれどういったものなのかお話ししていきましょう。
4-1 薬物治療
ここでは、ALS の治療法について書いていきます。
■リルゾール(内服)
ALS治療には、進行を遅らせる作用のある薬「リルゾール(内服)」があり、これは進行を抑える効果があると認められています。
しかし、呼吸機能検査をした上で適応を判断する必要があるようです。
■エダラボン(点滴)
これは、病初期に進行を抑える効果が認められています。
しかし、「エダラボン(点滴)」は、腎機能が低下している場合などに使用できないこともあるので、血液検査などをした上で適応を判断する必要があるようです。
4-2 リハビリテーション
ALS治療には、「リハビリテーション」がとても重要と言われており、これは残存機能を維持し、生活の質を保っていくために行われます。
また、ALSにともなって起こる筋肉や関節の痛みに対して、筋肉や関節の動きをスムーズにするよう、毎日継続的に行う必要があります。
4-3 ケア
ここでは、ALS のケア方法について書いていきます。
■コミュニケーション
「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」は、全身の筋力が徐々に弱まっていく、未だに謎が多い難病です。
また、徐々に動かなくなる身体とは裏腹に意識や五感は最後まで残るという、患者に大きな精神的ストレスがかかる病気でもあります。
症状がすすみ、話しにくい、手の力が入らないなどの症状が出ると、家族や他のヒトとのコミュニケーションが大変になります。
その為、筆記や文字盤の指差しなどでコミュニケーションを取ったり、透明文字盤を追視することでコミュニケーションを取る必要があるので、早めに「新たなコミュニケーション手段の習得を行う」ことが大切です。
■食事摂取
食べ物を飲み込んだりすることが難しくなった場合、「食事形態を工夫する」必要があります。
基本的には、柔らかく水気の多いもの、味の淡泊なもの、冷たいものが飲み込みやすいと言われています。
しかし、飲み込みにくさがさらに進行した場合には、点滴で栄養を補給したり、鼻から食道を経て胃に管をいれて流動食を補給するなどの方法があります。
■呼吸補助
呼吸困難が進行すると、呼吸を補助してくれる装置の力を借りなければ自力で呼吸することができなくなります。
「呼吸補助装置」には、鼻や口にマスクをつけて行う呼吸の補助と、気管切開による呼吸の補助があります。
ALSでは呼吸を補助してくれる装置を使用することで、延命を期待することができますが、進行性の疾患のため、補助装置をつける場合には、生涯外すことができません。
その為、患者本人や家族とよく相談した上で決める必要があると言えます。
5 寛解はするのか?ALS(筋萎縮性側索硬化症)の経過

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「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」という病気は、「進行性」のため、一度この病気にかかると症状が軽くなるということはないと言われています。
初期症状として、疲れやすい、手足の腫れ、筋肉のピクツキ、筋肉の痛みや、舌の動きが思い通りにいかないなどが挙げられますが、これらの症状から始まり、筋肉が次第に痩せ、動かなくなっていくのです。
しかし、患者さんによって、症状や進行の速さには、大きな違いがあります。
また、知覚神経等は侵されないので、知能や感覚は正常を維持したまま、進行する疾患と向き合わなければなりません。
その為、「周囲の協力がとても大切」になってきます。
ただ、知覚神経等は侵されないことを活かし、「瞬きワープロ」などを使用し意思表示することで原稿を書き、社会に発信している患者さんもいます。
6 介護施設について

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難病指定されている「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」は、進行状態によって、24時間看護師がいる施設でなければ、施設での暮らしが困難になることが多いですが、現在では対応可能な介護施設が「増えてきている」のが事実です。
しかし、増えてきているとはいっても、理想的な介護施設を探し出すのは難しく、初期段階では家族でのケアが可能であっても、徐々にそれが難しくなってきます。
その為、ALSと診断されてしまったら、早い段階から受け入れ可能な施設を探すことをおすすめします。
まとめ
今回は「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」という病気について紹介してきました。
難病指定されており、進行性のため、一度この病気にかかると症状が軽くなるということはないと言われています。
初期症状としては、日常生活で見過ごしがちな症状が該当している場合が多いので、油断していると危険です。
そのため、覚えがあるものがいくつかあれば、早めに病院へ行くようにしましょう!
今回の内容をきっかけにALSについての意識を少しでも高めていただければ幸いです。
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