皆さんは「訪問看護」というサービスについて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
おそらく多くの方が、「訪問看護 = 病気によって体が不自由になり自分一人では生活がしづらくなってしまった人が受けるサービス」という認識を持たれているはずです。
しかしながら実際は、「身体的なケア」だけではなく「心のケア」を必要とする方も、同じように訪問看護を利用することができます。
後者は「精神科訪問看護」とも呼ばれ、うつ病や統合失調症を始めとした精神疾患をお持ちの方が、看護師や精神保健福祉士といった有資格者による心のケアを受けることができるというものです。
訪問看護というサービス自体は、日本でもかなり前から利用されてきた一方で、この「精神科訪問看護」を知らない方は意外と多いのではないでしょうか?
今回は、意外と知られていない「精神科訪問看護」というサービスについて詳しく解説いたします。
目次
1 精神科訪問看護とは?

出典 : https://www.photo-ac.com/
1-1 心のケアが必要な方に有資格者が訪問しサポートするサービス
精神科訪問看護とは、精神疾患をお持ちの方や心のケアを必要とされる方の元に、看護師や精神保健福祉士といった有資格者が直接訪問し、健康状態に関する相談やサポートを受けられるサービスです。
訪問看護というと高齢者が受けるサービスというイメージが強いかもしれませんが、精神科訪問看護は、たとえ身体的な疾患を抱えていない場合でも、心のケアを必要としていれば受けることができます。
精神疾患や心の傷を抱えたまま一人で全てを抱え込んで生きることは、とても大変なことです。
自分の心の辛さや生活を送る上での不安などを、専門的な知識を有する人間に相談するということは、それだけでも精神的な負担を軽減することにつながります。
1-2 精神疾患を抱える方全般が対象となる
精神科訪問看護は、医師から精神疾患の診断を受けた方全般がサービスの対象です。例えば、以下のような疾患の方が挙げられます。
精神科訪問看護の対象となる精神疾患の例
- 認知症
- うつ病
- 躁鬱病(双極性障害)
- 不安障害(全般性不安障害や社会不安障害等)
- パニック障害
- 人格障害(境界性人格障害や自己愛性人格障害)
- 発達障害(多動性障害やアルペルガー症候群)
- 統合失調症
- 摂食障害(拒食症や過食症)
- 依存症全般(アルコール依存症や薬物依存症等)
本来、精神疾患とは、メンタルクリニックの主治医と患者さん本人がカウンセリングや投薬を重ねながらゆっくりと治療し寛解していくものです。
しかしながら、外来通院が途絶えがちになってしまったり、薬を継続して飲めなかったり、病気自体への強い不安から生活に支障をきたしているような方も中にはいらっしゃいます。
治療をしたいけれど思うように生活リズムを整えることができず苦しんでいる方が、精神科訪問看護によるサポートを受けることで、快方に向かいやすくなるわけです。
2 精神科訪問看護のサービスって具体的にどのような内容なの?

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精神科訪問看護では、以下のようなサポートを提供しています。
精神科訪問看護のサービス内容の例
- 服薬の援助や管理
- 病状の観察と早期発見
- 本人の通う病院の主治医との連絡や相談
- 生活リズムを整えるために必要な助言と援助
- 対人コミュニケーション能力改善のための助言と援助
- 利用者の家族からの相談に対する助言
- 就労意思のある方に向けた支援 etc…
このように、精神科訪問看護とは、生活の不安を解消するために必要なあらゆる助言とサポートを行ってくれるサービスなのです。
病状の観察や早期発見といった基本的な項目はもちろん、自分一人ではなかなか改善しにくい生活習慣や、コミュニケーション能力の改善に至るまでトータルサポートしてくれます。
ご家族もまた、有資格者たちによるカウンセリングを受けることができるため、看病の精神的負担を軽減することができることでしょう。
3 精神科訪問看護を利用するにはどうしたら良いの?

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精神科の主治医による指示書が必要
精神科訪問看護のサービスを利用するためには、まずは主治医から「精神科訪問看護を受けてください」という指示書をもらう必要があります。
つまり、「自分は精神疾患の疑いがあるから、精神科訪問看護を利用したい」という自己診断では、残念ながらサービスを受けることができません。
ただし、精神保健福祉手帳の申請や障害程度区分の認定までは必要とされていません。なので、そのあたりの面倒な公的な手続きは不要です。
まずはしっかりと精神科を標榜しているメンタルクリニック等に通い、主治医に相談してみましょう。あとは患者さん本人の同意に基づく契約さえできれば、サービスを受けることができるようになります。
4 精神科訪問看護は保険適用できる?

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4-1 精神科訪問看護は保険適用対象
精神科訪問看護は、保険適用の対象です。
一般的な国民健康保険又は健康保険なら3割負担、後期高齢者医療保険の場合は1割〜3割負担、医療券を持っている生活保護受給者は自己負担なしでサービスを受けられます。
知っておこう!保険ごとの自己負担額
- 国民健康保険…3割負担
- 健康保険…3割負担
- 後期高齢者医療保険…原則1割負担。ただし所得によって2割〜3割負担になることもある
- 生活保護受給者…原則自己負担なし。ただし医療券を提示する必要がある
4-2 自立支援医療制度を利用すれば国が治療費の一部を負担してくれる
自立支援医療制度とは、各都道府県による指定を受けた医療機関にて精神疾病の通院治療を行う方に対して、治療費の一部を公費負担する制度のことです。
この制度を利用することで、自己負担額が1割負担になります。
ただし、制度を利用するには、精神科医師による診断書を発行してもらった後に、居住地域を管轄している「精神保健福祉担当課」に自立支援医療費支給認定申請書を提出する必要があります。
この申請が受理されれば、「自立支援医療受給者証」の交付を受けて、制度の利用を開始することができるのです。
ちなみに「自立支援医療受給者証」は、1年更新となっているため、毎年手続きを行う必要があります。
少々手続きが煩雑ですが、申請が通れば医療費を少しでも抑えることができますので、併せて利用を検討をしてみると良いでしょう。
5 精神科訪問看護の利用料金はどれくらい?
利用料金は、訪問看護を提供するステーションによって異なります。
今回は、例として神奈川県横浜市緑区に本拠地を構える「アイエル訪問看護ステーション」さんの利用料金を参考にさせていただきました。
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出典 : アイエル訪問看護ステーション 「精神科訪問看護料金表」より
3割負担の場合で、1回あたり1,200円〜1,600円が相場のようです。
これを月に4回利用すれば、6,000円前後という決して安くはない費用がかかってしまいます。一般的な国民健康保険や健康保険に加入している方は、先ほどご紹介した、自立支援医療制度などを併せて利用したいところです。
もちろん、ステーションによってはもう少し安い場合もありますので、お住いの地域周辺の訪問看護ステーションに直接問い合わせてみると良いでしょう。
まとめ
今回は、「精神科訪問看護」というサービスについてご紹介しました。
最後に今回ご紹介した内容のおさらいをしておきましょう。
精神科訪問看護のまとめ
- 精神科訪問看護とは、心のケアが必要な方の元に有資格者が直接訪問し相談やサポートを受けられるサービス
- 精神科訪問看護を受けるためには、精神科医を標榜する医師による指示書が必要となる
- 通常の訪問看護と同じく、健康保険等の適用対象となっている
- 自立支援医療制度を利用すれば、負担額を1割まで抑えることができる
- 利用料金は各ステーションによって異なるが、3割負担の方で1回あたり1,200円〜1,600円が相場
精神科訪問看護のサービスを利用するには、まずはお近くのメンタルケアクリニックにて医師の診察を受けるところからスタートします。
一人で抱え込んでいては、ご自身の健康状態にも、そして看病を行うご家族の方にも大きな負担を強いることになってしまいます。
まずは医師に相談し、必要に応じて精神科訪問看護サービスの利用を検討してみてください。
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